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どうする義清って何なのさッ #1 義清のご先祖様がどうする? 

目次

「村上義清(右)と武田信玄」城坂稲荷大明神に奉納された絵馬(坂木宿ふるさと歴史館所蔵)

祝1周年

ハジメ編集長(以下、パパ):読者の皆さま誠にありがとうございます! 我らが「ずくずくタイムス」が5月1日をもって1周年を迎えました!

敏腕記者ケンちゃん(以下、ケン):もう1周年なんだねぇ。それはいいとして、ここ最近、投稿してこなかったよね。だいぶサボったんじゃないの?

パパ:サボ・・。と、とにかく今回は1周年の記念の記事ですから、大いに盛り上がってお届けしていきたいと思います!

ケン:まぁいいけど・・。サボった分、頑張って取り返さないとね!

パパ:・・ところで、ちまたでは「どうする義清」っていう話題で持ちきりだって聞いたけど?

ケン:それを言うなら「どうする家康」でしょ? 2023年も大河ドラマと強引に結びつけるのか・・。その義清さんって、もしかして村上義清さんのこと?

パパ:さすがケンちゃん! 察しがいいねぇ。坂城町出身の武将・村上義清さんのことだよ。

ケン:ボクのまわりでは村上義清さんの話題は一つも出てこないけどなぁ。

パパ:あれ? おかしいなぁ。「神君家康公が注目されると村上義清さんの株が爆上がりする」って、江戸の町では当たり前なんだけど・・。

名犬ハンドリー(以下、ハン):爆上がりって・・。しかも、どこの町の話をしているんだワンッ!

ケン:パパがいつの時代を生きているかは置いといて。徳川家康さんと村上義清さんに直接の繋がりはないよね。でも、江戸時代の庶民の間で家康さんの話題になると、なぜか義清さんが注目されていたみたい。パパは理由がわかるかな?

ハン:パパはわからないようだワンッ! ケンちゃん、正解を発表して欲しいワンッ!

ケン:正解は、『村上義清さんは、武田信玄さんに二度も勝ったことがある、すごい武将』だからぁ~!

パパ:信玄さんに勝ったのは確かにすごいけど・・。家康さん関係ないじゃん??

ケン:落ち着いて! それでは、詳しくはこの方に解説をしていただきましょう。前上田市立博物館館長の滝澤正幸さんです。2023年も宜しくお願いいたします。

パパ:待ってました!

ハン:お願いしますワンッ!

滝澤前館長(以下、滝澤):ケンちゃん、ハンドリー先生、読者の皆さんこんにちは! 

パパ:あの・・ワタクシは・・?。

滝澤:そ、それにしても、家康さん・信玄さん・義清さんの三者の繋がりについて知っているなんて、ケンちゃんはさすがだね。今回は坂城町が生んだ郷土の偉人・村上義清さんについて解説するよ。

少し長くなるから・・

#1 義清のご先祖様がどうする?

#2 上田原の戦いでどうする?

#3 砥石城の戦いでどうする?

#4 川中島の戦いでどうする?

の、四つの章に分けてお話するね。

パパ:よろしくお願いします!

風が吹けば桶屋が儲かる?

滝澤:さっき、ケンちゃんが言っていたように、家康さんと義清さんには直接の繋がりはないんだよね。でも、江戸時代に「神君家康公はすごい人だよね」って話になると、義清さんもセットで賞賛されることが多かったんだ。どうしてだと思う?

パパ:どうしてだろう?

ケン:ヒントは武田信玄さんってことだね。

パパ:難しいなぁ・・。

ケン:家康さんと義清さんの直接対決はないけれど、実は、それぞれと戦ったことがあるのが武田信玄さんなんだよね。

滝澤:さすがケンちゃん! では解説するよ。実は、三方ヶ原の戦いで家康さんに勝ったのが信玄さん。そして、上田市内での二つの戦い(上田原・砥石城の戦い)で信玄さんに勝ったのが義清さんなんだ。だから、「神君家康公ってすごい人だよね」って話になると、家康さんに勝った信玄さんも、信玄さんに勝った義清さんもすごいよね。という感じでセットになって話されることが多かったんだ。

パパ:そうだったんだぁ。

ケン:まさに、風が吹けば桶屋が儲かるっていう状況だね(笑)

まさかの島流しで○○へ!?

滝澤:では、村上氏のルーツから解説するね。実は、村上義清さんは清和源氏の流れをくむ由緒ある家柄なんだ。

パパ:ほほう! いきなり清和源氏ときましたか! 源頼朝さんと同じだね!

滝澤:パパもなかなかやるね! 清和源氏や桓武平氏についてサラッと説明するよ。平安時代の話だけど、天皇家の親戚が増えすぎる問題が発生してね。

パパ:ふむふむ。

滝澤:朝廷内の役職には限りがあるし、天皇の身内だからと言ってやたらと厚遇すると相当なお金が必要だよね。それに権力争いの可能性もある。その状況を打開するために、臣籍降下と言って天皇の子や孫には「源」、ひ孫には「平」という「姓(かばね)」を与え、貴族としての位を下げたんだ。

パパ:「姓(かばね)」を与えるにあたって、何か基準はあったの?

滝澤:いい質問だね。例えば、その人のお母さんの身分で判断されることもあったよ。

パパ:なるほど。つまり、側室の子やその孫たちには出世の見込みがないってことかぁ。令和の時代を生きるしがないパパと同じだね。切ないなぁ(泣)

ケン:悲しい自虐はやめてよね・・。

滝澤:まぁまぁ(笑) いろいろなケースがあるけど「姓(かばね)」をもらっても、貴族としてそのまま朝廷内で役職に就く人もいたし、受領(国司)として地方に派遣されて、その地域の豪族との結びつきを深めて実権を握り、地方領主化する人もいたんだ。

ケン:坂東八平氏(ばんどうはちへいし)って聞いたことがあるよ!

滝澤:さすがケンちゃん! 「鎌倉殿の13人」を見ていた人にはわかりやすいかも。北条氏、三浦氏、千葉氏とかだね。ちなみに、平氏は朝廷から離れた地方に派遣されることが多かったみたい。坂東は今の関東地方のことだよ。

パパ:あれ? 坂東って徳島県じゃないの? ゆで卵の板東さんは徳島商業高校~中日ドラゴンズだよ。

ケン:それは板東英二さんでしょ!

パパ:じゃ、じゃあ、坂城町の村上義清さんのご先祖様も地方に派遣されたお役人さんだったのかなぁ?

滝澤:それがちょっと違うんだ。

パパ:と、言うと?

滝澤:村上義清さんのご先祖様は、なんと当時の天皇を呪った罪で島流し(流刑)にあったんだ。

パパ:えーーーーーッ!?

滝澤:びっくりしたかな? その島流しにあった先が、坂城町村上だって推定されているよ。

パパ:あいや~びっくりした(笑) 

ケン:あいや~って(笑) 島流しで来た場所が坂城町村上だから、村上氏になったんだね。

滝澤:ご名答!

一発逆転の大出世

パパ:呪いってすごいよね。ワラ人形を使ったのかなぁ・・。

ケン:なんだか怖いよ・・。

滝澤:このエピソードは『中右記』という貴族の日記に出てくるんだ。

パパ:そうなんだぁ。

滝澤:色々あったにしても、時代が下って木曾義仲さんと後白河法皇が対決する時は、当時のご先祖様は後白河法皇の味方になる。

ケン:朝廷と仲直りしたのかなぁ。

滝澤:気まずかった当の本人同士が亡くなり、ギクシャクしていた関係が薄れたのかもね。朝廷側に付き、その後ご先祖様は信濃惣大将(しなのそうたいしょう)に任じられる。これは、守護大名に匹敵するすごい地位だよ。

ケン:島流しにあった人がいる一方で、大出世だね!

パパ:何が起こるかわからないなぁ・・。やっぱり予定調和はつまらない! アントニオ猪木さんがよく「一寸先はハプニング」って言っていたことを思い出すなぁ。猪木さんは本当に偉大だよ。プロレスファンとして心よりご冥福をお祈りいたします・・。

ハン:何の話をしているのかワンッ!

「太平記絵巻」鎌倉時代末期、元弘の乱の一場面。義清のご先祖様にあたる村上義光(中央)が主君の護良親王(左)を幕府軍から逃がすため、自らが身代わりとなり腹を切る。村上一族が、古くから中央政権と繋がりが深いことが分かる。(坂木宿ふるさと歴史館所蔵)

#2 上田原の戦いでどうする? に続く)