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森の家はらとうげの歩み①、②では、三代目園長 松井正さんの奥様である松井幸枝さん(92歳)に、森の家はらとうげの成り立ちを紹介していただきました。
今号では、原峠保養園 統括管理者 武捨幸雄先生(70歳)のインタビューをお届けします。武捨先生には、2021年よりスタートした母子生活支援施設「上田市母子寮」の運営についてお話をしていただきます。
※2022年9月現在、社会福祉法人原峠保養園は「森の家はらとうげ」と「上田母子寮」を運営しています。
母子寮が加わりました
ーー昨年の4月1日より社会福祉法人原峠保養園に上田市母子寮が加わったと伺いました。いきさつを教えてください。
これまでは、社会福祉法人上田明照会が上田市母子寮の運営をしてきましたが、指定管理を返上することになりました。そこで、明照会で社会福祉士として40年働いてきた私が中心となり、上田市と連携して母子寮の引き受け先を探すことになったんです。
ーー引き受け先が白紙の状態で指定管理が返上されたのですね。
そうなんです。また、社会福祉法の規定がありどこでも良いというわけではありません。候補については、社会福祉法人としてすでに乳児院や児童養護施設を運営している法人をピックアップしました。その中から社会福祉法人原峠保養園に母子寮の運営を引き受けていただき、私を含めた多くのスタッフとともに移籍することになりました。
ーー原峠保養園に引き受けていただいて何よりでしたね。仮に、もし引き受け先が見つからなかった場合はどのようになったのでしょうか?
もちろん他の候補に当たったと思いますが、それでも引き受け先が見つからなかったら、私が法人を立ち上げてもいいと思っていました。母子寮はヒューマンサービスとしての専門的な現場運営が必要です。引き受けてくれるのならどこでもいい・・というわけにはいきませんから。
ーー武捨先生の責任感と覚悟の重さを感じます!
母子寮とは・・?
ーー母子寮について教えていただけますか?
母子寮の成り立ちは戦後までさかのぼり、戦争未亡人とその子ども達への支援として住宅を提供してきました。当時は日本全国に650以上の施設があったと聞いていますが、現在は200程度まで減りました。
ーー戦争未亡人への支援とは・・歴史を感じますね。
そうですね。いわゆる屋根対策とでも言いましょうか、住まいがあればそれで良かったわけで、支援をするスタッフは必要最小限の人数しかいませんでした。現在はニーズが変わり、生活支援を受けながら社会復帰を目指す母子のサポートが主な業務ですので、スタッフも充実しています。
ーーなるほど。時代のニーズに合わせて母子寮のスタイルも変化していったのですね。
はい。先程ヒューマンサービスと言いましたが、母子が抱える課題は様々ですので、その方々にあった支援のチーム作りが非常に大切です。明照会から原峠保養園に移籍した際に、多くのスタッフが一緒についてきてくれたことは何よりも嬉しかったですね。
ーーチームで支援をする。頼もしいですね!
ときには数十年のサポートを・・
ーー母子寮で親子食堂をされていると伺いました。
平成28年に親子食堂を上田地域で初めて立ち上げました。当初は週二回、現在はコロナ対策として、月一回の開催としています。親子食堂には、母子寮を退寮された母子も多く来られます。そこで、顔色を見たり話をしたりして、変わった様子がないか確認するようにしています。
ーー退寮された方々へのフォローも必要なのですね。
そうですね。私は、フォローは10年が基本と考えています。なかには、40年フォローし続けているケースもあります。
ーー40年とは・・!
驚かれるかもしれませんね。もちろんケースは様々ですが、ときにはそのくらいの長い目が必要です。その分、無事に社会復帰ができた時は喜びもひとしおですね。
次世代を担うリーダーの成長に期待
ーー統括管理者とは?
今年の4月から、私は「森の家はらとうげ」と「上田市母子寮」の二つの施設の管理を任されることになりました。もちろん、それぞれの施設には専属の責任者がいますので、現場の仕事は任せつつ、成長を見守っているというところです。
ーー人材育成も大切なお仕事ですね。
そうですね。今回、原峠保養園に母子寮が加わったことは、人材育成の面から見ても、それぞれの施設にとって非常に有意義でした。異文化を受け入れると言うことは、今までにはない新しい風が吹き組織を活性化させると思います。
現在、私は70歳で、本来ならリタイアしていてもおかしくないのですが(笑) 私の経験が必要なうちはもう少し頑張りたいと思います。
ーーリタイアされた後にしたいこと、楽しみたいことはありますか?
自宅に薪ストーブがあるので、木を切り倒すことも含めイチから薪を調達する生活をしたいと思っています。薪は買うものではなく、自分で集めるものですから(笑) ただ、残念ながら今は忙しく難しいですね。しばらくの間はきこり屋さんに協力してもらいながら薪割りを楽しみたいと思います。 (終わり)