うえだ地域発ローカルメディア

しんぺるのあんパンと、友情物語

目次

こしあんと、スタッフさんの愛情がたっぷりつまった「こしあんパン」

NHKの朝ドラ「カムカムエブリバディ」をご覧になっていた皆さん。カムカムロスからは抜け出せましたか?

ワタクシ(ハジメ編集長)はもう大丈夫。すっかり「ちむどんどん」にハマりつつあります。むむ・・ワタクシの話など聞いてない?? し、失礼しました(汗)

さて、カムカムエブリバディの放送後、巷ではひそかなあんこブームが到来。上田市内にもおいしいあんこが食べられるお店はたくさんありますよね。今回、上田市諏訪形にある老舗のパン屋しんぺるさんが、ずくを出して(頑張って)こだわりのおいしいあんこを作り続けているという情報をキャッチ! 

いったいどのようなこだわりがあるでしょうか・・。お話をしてくださるのは、会長の滝沢幸三さん(69才)です。しんぺるさんの「あんパン」はなぜおいしいのか!? そこには知られざる友情秘話がありました。

創業80年の老舗ですが、実は・・

―今年(2022年)、しんぺるさんは創業80年を迎えられたそうですね。おめでとうございます!

「ありがとうございます。1942年(昭和17年)に開業し、80周年を迎えることができました。でも、実はもっと前からお店はあったんですよ」

―と、言うと?

「登記したのが1942年なんです。私の父が生まれた1928年(昭和3年)にはもう店はあったそうなので、実際はもっと古いんですよ。父から聞いた話では、創業者の祖父が日露戦争に行った際に、パン作りを覚えて帰って来たことから始まるそうです」

―日露戦争とは・・! 

「私が生まれた時には祖父はもう他界していましたので、直接話を聞いたことはないのですが・・。でも、1905年(明治38年)に日露戦争が終わって、そこからパン屋を始めたと考えると、おそらく100年くらい続いていると思います」

―100年も続けられるなんて素晴らしいです! 現在は、息子さんに社長業を譲られましたね。

「私は無理に跡を継がせるつもりはなかったのですが、本人がやる気になってくれていて、ありがたい限りです。よそでたくさん修業を積んできましたし、研究熱心だし。頼りにしています」

―親子四代でのパン屋さん。ステキです。

あんパン大人気です!

あんこがぎっしり + 薄皮 = 優勝!

―しんぺるさんのあんパンは、甘さ控えめであんこがぎっしり! 食べ応え満点ですよね。お店での人気はいかがですか?

「お店での人気は、あんパンとチーズトライアングルで1、2位を争いますね。特にあんパンはファンの方が大勢いらっしゃって、5個、10個とまとめて買われるお客様もいますよ」

―それはすごい!

「お出かけの際の手土産として買われる方もいらっしゃいます。ありがたいですね」

―購入されるお客様自身が大好きなんでしょうね! それにしてもすごい人気です。こうやってインタビューしている間にも、あんパンの在庫を確認する電話が・・

こちらも大人気! テレビの取材でも取り上げられたチーズトライアングル

実は、創業時からずっと○○のあんパンでした

―あんパンは創業当初からあるのでしょうか?

「はい。あんパン、ジャムパン、クリームパンと、コッペパン、食パンは創業当初からあったそうです。ちょっと話は逸れますが、第二次世界大戦中、また戦後の食糧難の時代は配給制でしたよね? 当時、小麦は各家庭に配給されていたそうなのですが、その小麦をうちの店に持ち込んで「パンと交換」ということがあったそうです。

―小麦とパンの物々交換ですか! 当時のリアルな生活状況を物語っていますね。

「少なくともその頃はあんパンを始め菓子パンはなかったと思います」

―創業当初のあんパンと今のあんパンは違うのでしょうか?

「はい。今のあんパンはこしあんですが、実は、創業当初からずっと小倉のあんパンを作っていました。ただ、あることをきっかけに7~8年前に今のこしあんに変えたんです」

バン作りは時間との勝負! 現在、滝沢会長はパン作りを全て社長に任せている(2020年撮影) 

友情のこしあん

―小倉派だった滝沢会長が、あんパンをこしあんに変えるのにはどんなきっかけがあったのでしょうか?

「あんパンにかかわらず、今でもあんこは小倉が好きです(笑)ハジメ編集長は上田市小泉にあった木村屋さんと言うパン屋さんがあったことは知っていますか?」

―いえ、すみません・・。

「知らなくても無理はありません。木村屋さんは7~8年前に店を閉じられました」

―そうでしたか。

「木村屋さんは私の父の友人でした。木村屋さんは東京銀座の木村屋総本店というあんパンを最初に作った店で修業を積み、その後のれん分けしてもらい地元の小泉でパン屋を開業しました。ほとんどあんパン一本だったと思うくらいにあんパン作りに打ち込んでいて、多い時には一日に1,000個近く売り上げた地元の人気店だったんです」

―一日にあんパン1,000個! それはすごい。

「すごいですよね。でも、パン屋さんは体が資本。年齢を重ねてこれ以上の無理はできないと思ったんでしょうね。弟子も跡継ぎもいない木村屋さんは廃業を決意されました。そこで、木村屋さんと父が話し合い、木村屋さんのあんパンをしんぺるで引き継ぐことにしたんです」

―そんなお話があったとは・・

「その木村屋さんのあんパンがこしあんだったと言うわけなんです。父が決めてきたこととは言え、小倉派の私は『大丈夫?』と半信半疑な思いでいました。ですが、引き継いだからには小倉のあんパンを作るのを止め、こしあん一本にしました。するとあれよあれよという間に店の看板商品にまで上り詰めたんです」

―それはすごい!

「父も木村屋さんももう他界しているので、直接お礼は言えませんが・・二人には本当に感謝しています。7~8年経った今でも製法は変えていませんし、これからもしんぺるの看板商品として作り続けて行きたいと思います」

―おいしいパンをこれからもよろしくお願いします。最後に、読者の皆さまにメッセージをどうぞ!

「今回の話は、もしかしたらうちのスタッフでも知らない人がいるかもしれません。思い入れのあるあんパンのストーリーを皆さんに知っていただけて嬉しかったです。あと、お客さまに一点お願いがあります。しんぺるでは、学校や企業の購買用のパンを何十種類も作っているため、木村屋さんと違い、あんパンだけ1,000個、というわけにはいかないのが現状です。パンの予約注文や、お取り置きもできますので、お電話にてお気軽にお問い合わせください」

今回は、しんぺるさんのあんパンにまつわる友情物語をお届けしました。

滝沢会長ありがとうございました!

上田駅別所線改札近くで出張販売(火、木の16時~19時)をしている。また、この春から高校野球長野大会(上田県営球場)の出張販売も再開。

[お店情報]

しんぺる(上田製パン有限会社) 上田市諏訪形1335-1

営業時間・月~金 9:00~18:00

       土 9:00~16:00

定休日・・第一土曜日/日曜日/祝日

電 話・・0268-22-0640

インスタグラムを始めました。フォローよろしくお願いします。

編集後記

ケンちゃん(以下ケン):とってもステキなエピソードだったね。

ハジメ編集長(以下パパ):これからあんパンを食べる時、ちょっと特別な味に感じるかもしれないなぁ。

ハンドリー先生(以下ハン):それよりも、パパはなんでしんぺるさんのあんパンに注目したのかワン!

パパ:よくぞ聞いてくれました! 実はここだけの話、パパもたまに料理するでしょ? この前、新ショウガの佃煮を作っていた時に「おいしゅうなれ・・おいしゅうなれ・・」っておまじないをしながらショウガを煮詰めていたわけ。

ケン:それ「おいしいあんこ」のおまじないだけど・・。

ハン:カムカムロスから抜け出せてないワン!

パパ:そしたらね、あんこの神が出てきてこう言ったんだ

「ずくを・・出して・・いる・・者が・・いる・・上田市・・諏訪形・・に・・ある・・しんぺるさん・・に・・話を聞いて・・みなさい・・もしく・・は・・都はるみさん・・の・・ アンコ椿は恋の花・・を・・アカペラで・・歌いなさい・・」

ケン:なんでショウガを煮詰めてあんこの神が出てくるの?

ハン:意味わからんワン!

パパ:まぁまぁ。それで、お告げの通りしんぺるさんに話を聞いたら、とってもいいお話が聞けたってわけさ。

ケン:しんぺるさんのお話そのものはすごくよかったんだけどね・・

ハン:パパの話をまともに聞いていると疲れるワン!

パパ:あら、お二人ともお疲れのご様子! じゃあ、ここはパパが一曲歌って疲れを吹き飛ばしてしんぜよう! それではお聞きください。都はるみさんで「アンコ椿は恋の花」です。

「アンコォ~椿はぁ~・・」

ケン・ハン:もう! いい加減にしてよ!

パパ:しーん・・。じ、次回をお楽しみに。